八ヶ岳自然ふれあいセンターでは、来館者の皆さんがただ情報を受け取るだけではなく、自然とのふれあいを通じて「気づき」や「感動」を得られるよう、インタープリテーションという手法を、展示や体験プログラムに積極的に取り入れています。

ここでは、当センターでのインタープリテーションに関する取り組みや工夫についてご紹介します。

1 インタープリテーションとは

「インタープリテーション(Interpretation)」は、自然や文化・歴史などの対象を、分かりやすく・魅力的に伝え、その意味や価値に気づいてもらうための手法です。

単なる説明ではなく、ストーリー性や体験を通して、対象への理解や関心を深めることを目的としています。

レンジャー(自然解説員)はインタープリテーションの考え方のもと、プログラムや展示を企画・実施しています

インタープリテーションの理論的な基礎を築いたアメリカの作家フリーマン・チルデンは、著書『Interpreting Our Heritage』の中で、次のように述べています。

(インタープリテーションとは)単なる情報の提供ではなく、実物や直接体験、教材等を通して、事物や事象の背後にある意味や関係性を明らかにすることを目的とした教育活動である。

2 体験プログラム

ガイドウォークなどの自然体験プログラムで、レンジャーは以下のような工夫を行っています。

五感を使った体験

木の肌に触れる、葉の匂いをかぐ、川のせせらぎを聴く、高原の風を感じる…など、さまざまな感覚を使う体験を、プログラムの中に組み込んでいます。その場限りの知識ではなく、感覚や感情と結びついた印象に残る体験を大切にしています。

参加者が主体的に関わる

レンジャーは、一方的な説明だけというプログラムにならないよう心掛けています。五感を使った体験のほか、問いかけや課題を用意し、参加者が自ら動き、考え、表現する主体的な関わりを促しています。

対話を促す

参加者のコミュニケーションの相手はレンジャーだけではありません。家族や友人、ほか他の参加者との対話を通して、発見や感動が広がることもあれば、自然との静かな対話の時間が心に残る場合もあります。レンジャーはこうした対話の場を意識的につくり出しています。

3 展示におけるインタープリテーションの工夫

センターでは、館内展示や「森のクイズラリー」などのセルフガイド(※)でも、来館者の自発的な関心を引き出す工夫を多く取り入れています。

※セルフガイド:来館者が自分のペースで自由に体験できる教材

ハンズ・オン展示

ハンズ・オン展示とは、来館者が実際にさわったり、動かしたりすることで楽しめる体験型の展示をいいます。センターでは、この考え方のもと、レンジャーの手づくりによる、とっつきやすい・親しみやすい展示づくりに努めています。

学びの「入口」をつくる

来館者の年齢層は子どもから大人までさまざまです。一つの展示の中に、触れるもの、映像や写真、関連図書など、いくつもの「関心を持つきっかけ=学びの入口」を設けて、幅広い人が関心を持てるように工夫しています。

利用の様子を見ながら改善

展示は設置したら終わりではありません。来館者の利用の様子や反応を踏まえて、内容や配置、動線などを少しずつ改善しています。来館者とともに展示を育てていくことを目指しています。

八ヶ岳自然ふれあいセンター展示紹介
※現在の展示内容とは異なります

4 インタープリテーションを支えるしくみ

センターでは、以下のような機会を設けて、インタープリテーションの向上を目指しています。

ふりかえり

プログラム終了後は、参加者の様子や反応を踏まえて良かった点や改善点を整理し、次回に活かすための「ふりかえり」を設けています。プログラムに同行した他のレンジャーからフィードバックを受けることもあります。

勉強会・研修

レンジャー間での情報共有や勉強会に加えて、インタープリテーションや関連分野の研修も積極的に受講し、研究者・専門家から、最新の理論や手法を取り入れています。

交流・ネットワーク

県内外の関連施設との情報交換や意見交流にも力を入れています。ネットワークを通じて得た知見を、センターの取り組みに反映しています。

八ヶ岳の自然や文化に出会う時間が、
みなさん一人ひとりの
心に残る豊かな体験となるよう、
当センターでは
これからもさまざまな工夫を重ねていきます。